トラストの中央移籍について

先日川崎競馬所属の地方馬トラストが中央競馬の重賞レースに勝った。同レースの地方所属馬勝利は13年ぶりのことである。これ自体は素晴らしいことだ。感動した。でもそのあとがいけない。
この馬のオーナーはレース勝利後、この馬の中央移籍を発表した。トラストは川崎所属時代、地方に所属したままイギリスダービーに挑戦する、とオーナーは豪語していた。また地方競馬関係者に夢を、とも語っていた。トラストが重賞レースに勝ったことでオーナーの目標はイギリスダービーから目の前にぶら下がっている中央競馬の高額な賞金に変わってしまったようだ。
この行動は競馬ファンの気持ちを全く考えていないと言わざるを得ない。地方競馬ファンはオグリキャップやハイセイコーのように地方から中央に移籍して大活躍した馬を心から愛してきた。しかし、この両馬が活躍した時代には地方競馬所属馬は中央のレースに出走することすら出来ない制度だったのだ。両馬はより強い相手を求めて中央競馬への移籍を選んだ。その後中央競馬会は地方競馬所属のまま中央のレースに挑戦できるように制度を変更し、メイセイオペラのように地方所属のまま中央競馬の大レースを勝利する馬が登場してきた。
今回のトラストは地方競馬所属のまま、中央の重賞レースを勝利した。まだ二歳だ。地方競馬ファンはトラストがイギリスダービーは大袈裟だが、日本ダービーや中央の大レースに地方競馬所属のまま出走する日を楽しみにしていた筈だ。地方所属のまま中央の大レースに挑戦できる制度も整っている。
ファン達はトラストが中央重賞を勝った瞬間、夢がグッと近づいたと感じた筈だ。だが、オーナーは違った。イギリスダービーなどと大袈裟な発言をしてファンの注目を集め、一度その馬の能力が高いと見るやファンの気持ちを置き去りにして中央への移籍を選んだのだ。
競走馬のオーナーには、競馬はファンのおかげで成り立っている事を忘れないで欲しい。イギリスダービーに勝ちたいなら、最初からイギリスで馬を預ければ良いし、日本ダービーに勝ちたいのであれば最初から中央競馬に馬を預けて欲しい。川崎競馬のファンは所属馬がイギリスダービーに勝つ事など望んでいない。中央の重賞レースに出ている事だけでも嬉しかったはずなのに、その馬は川崎競馬からいなくなってしまうのだ。
競走馬のオーナーには夢や希望を語る前にファンの喜びを考える力を持って欲しいと切に願いたい。